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歴史は繰り返すか?
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    2月26日なので、二・二六事件について考えてみる。
    といっても、恩田陸の『ねじの回転』についてのとりとめのない感想。

    時間遡行の技術が確立した近未来。「よりよい現在」にするために過去の歴史に改変を加えた人類だったが、これが思わぬ災厄を引き起こしてしまう。人類滅亡という危機を回避するために、改変された歴史を「正しい歴史」に戻すべく、国連はいくつかのポイントに介入し、修復を試みる。
    そのプロジェクトのメンバーである国連の確定担当者ジョン、日本の記録確定省職員マツモト、コンピューター技師のアルベルトらは、1936年2月26日早朝に遡る。二・二六事件に関わった3人の軍人――安藤輝三陸軍歩兵大尉、栗原安秀陸軍歩兵中尉、石原莞爾陸軍大佐の協力を得て、もう一度、歴史をなぞっていく。コンピューター「シンデレラの靴」に認証されている史実通りに過去を「再生」できれば「確定」。史実と異なってしまえば「不一致」となり、「確定」するまで何度でも「再生」しなおさなければならない。一刻も早く歴史を「確定」し、「正しい歴史」に戻すべく奮闘する国連のメンバーだったが、様々な妨害や各人の思惑に翻弄される。はたして歴史をやり直すことは可能なのか。そもそも「正しい歴史」など存在するのか――。

    作中の核となる事件、二・二六事件は、国連のスタッフであるジョンが語るように多くの日本人にとって何らかの思い入れがある事件かもしれない。ジョンは次のように語る。

    「君ら日本人は、この事件にいろいろ思い入れがあるらしいな」
    「本当に、君らは悲劇趣味だな。平家しかり、忠臣蔵しかり」
    「確かに、これは日本的な事件だな。責任の範囲と所在の曖昧さ、コミュニケーションよりも隠蔽を『和』と呼んで尊ぶ欺瞞。非常に日本人らしい」
    「青年将校たちは、陛下の正しい判断を側近が邪魔しているのでそれを取り除きたいと望んでいる。彼らの上官は、部下の気持ちが義憤だと知っているので無下にできない。陛下は国民の困窮など全く知らないから、青年将校の気持ちなど全く有難くない。陛下の周りの人々は、陛下が胸を痛めるのを恐れて国民の実情を教えない。また、彼らは青年将校たちが陛下を慕っているのもよく知っているから、陛下が彼らを怒っていることも言えない。見よ、この『思いやり』のオンパレード。極めて日本人的だ」(上巻pp.50-51)

    二・二六事件を作品の題材に取り上げているからには、恩田氏もこの事件に「いろいろ思い入れがある」日本人の一人だろう。だけど、その思い入れの深さを外側から冷めた目で(冷めた目を装って)こんな風に切ってみせる。二・二六事件が日本の近代における重要な転換点であったのは疑い得ない。でもその本質といえば、所詮はジョンが決めつけたように「単に、肥大化し、指揮系統が脆弱になった大組織が、危機管理のお粗末さから単純な事件を混乱させただけ」(上巻p.50)にすぎないのかもしれない。処断のタイミングと方法を間違ってしまったために、その後の歴史を左右するような大事件になってしまったのかも。

    作中の、真崎甚三郎ら当時の指導的立場にあった者たちが事件の処置をめぐって会見する場面では、理想に燃える蹶起将校たちに対して、浮足立つ上層部の頼りなさが際立つ。維新を遂げさせるのか、鎮圧するのか、どちらにつけば今後の自分に有利だろうと、責任転嫁や自己保身でいっぱいいっぱい。ま、これは現代の指導者たちにおいても「よくあること」なので、妙にリアル(そうか。日本の指導者たちは本質的には何も変わっていないのか)。

    刑の執行に際して「栗原死すとも維新は死なず」と叫んだという栗原安秀。「板垣死すとも自由は死なず」の板垣退助は一命を取りとめたけど、栗原は銃殺刑だもんなぁ。クーデターという非常手段で国を動かそうとするやり方はともかく、彼らの方が上層部よりもよっぽど日本の行く末を案じていたような印象。死刑となった将校らの多くが「天皇陛下万歳」と唱えて死んでいったという。「青年将校たちの一途な気持ちを思うと、なんとも気の毒で」(p.50)と言ったマツモトのように、真摯に国を憂い、主君に忠義を尽くそうとして死んでいった若い青年将校たちに同情的にもなるというものか。

    何にせよ本作で問われているのは、二・二六事件の本質ではなく、歴史にifはあるのか。歴史はいかに作られるのか。
    作中でアルベルトは語る。

    「人間が得た最大のギフトは知能じゃない、好奇心だ。好奇心、それ自体が目的となって、人間は冒険を続ける。好奇心が、理性も倫理も道徳も飲み込み、人間をそれまで見たこともない地平へと押しやる。その対象が宇宙であれ、生命であれ、歴史であれ」(上巻p.150)。

    人間が好奇心という最強の武器を携えて新しい地平を求めてきた過程が「歴史」として蓄積されている。人間の想像力に科学が追いついたら最後、それ以上の発展は望めない、というようなことを藤子不二雄のSFで言っていたっけ。

    「想像してみてくれ」と投げかけられた最後の場面は、作中に繰り返される「歴史は自己を修復する」という言葉や、結局は「歴史というものが、常に選ばされた唯一の選択肢であった」(上巻p.230)という石原莞爾の独白を思い起こさせ、何とも言えない無力感。

    誰かがしたり顔で呟く声が聞こえてきそう。
    「しょせん魔法など、人間には何の福音にもならないのだ」(下巻p.129)と。


    <読んだ本>
    恩田陸『ねじの回転  FEBRUARY MOMENT 』(上)(下)
    集英社(集英社文庫)2005年12月  ※単行本2002年12月刊行

    ※参考
    高橋正衛『二・二六事件 「昭和維新」の思想と行動』増補改版 
    中央公論社(中公新書76)1994年





    家にあった二・二六事件に関連する本。
    んー、私も「いろいろ思い入れがある」ようだ。
    宮部みゆき『蒲生邸事件』は残念ながら捨ててしまったらしい。
    今度は未読の武田泰淳『貴族の階段』を買おうっと。

    ・・・さて。

    『ねじの回転』の背表紙にご注目。
    なんと、上下巻で文字の入れ方や字体が違う!!
    違う古本屋で別々に手に入れたら、こんな失敗を・・・。
    ちなみに、上:2006年6月6日 第4刷、下:2006年1月28日 第2刷。

    2刷と4刷……マジかー?!集英社っっ!!!

        
    | 本・読書 | 00:34 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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